よくある化石の形態は、その生物の骨や殻が元の形のままである(変形することはあります)のですが、なかにはペチャンコになった板状のもの、丸い石の中から出てくるもの、大理石になっているものなどいろいろあります。このいろいろな化石の「ありよう」が、気になるかたも多いようです。
メイン画像:サメ(カルカロクレス・メガロドン)の歯 幅15cm 中新世 アメリカ産
ペチャンコの板状の化石
板状の化石とは、正確に言えば、板状の岩盤の中に挟まれたペチャンコになった化石のこと。板状の岩盤は、多くの場合粒子の細かい泥でできていますが、このような泥は水の流れの早い場所では堆積しません。流れのほとんどない、たとえば湖の底などでゆっくり静かに堆積します。とてもゆっくり少しずつ堆積するので、細かいシマシマの層になります。このとき、堆積の途中で生物の遺骸が紛れ込めば、一緒に積もっていきます。遺骸の上にさらに泥が降り積もり、長い時間をかけてある程度の厚さになると、それ自身の重さで圧縮し、さらに脱水作用によって地層は硬い岩盤へと変わります。そしてもともと細かいシマシマの層であったために、板状にはがれる性質の岩盤になるわけです。このとき岩盤に挟まれた化石もペチャンコに。こうなるとよっぽど大きな生き物の骨や、硬い殻でない限り、岩盤の中から取り出すことは難しくなります。そこで、多くの場合まるでレリーフのような状態で展示されます。
板状の化石は、概してとても保存状態が良いことが。なぜなら、流れのないところで壊れずにゆっくりと堆積物に埋まりますし、さらにそのような環境は低酸素であることも多く、遺骸が腐らずに保存された状態で埋まるからです。ときには、ふつうは分解されて残らないような、羽毛や体の軟体部などの化石が見つかることがあります。骨がもろくて化石になりにくい、鳥や翼竜、昆虫などの化石もこのような地層からよく発見されます。かの有名な始祖鳥はその代表格でしょう。
石灰質の非常にこまかな粒子の泥の中に埋もれている魚化石
アメリカ・ワイオミング州 始新世(約5000万年前)
丸い石の中にある化石
時々、楕円形や真ん丸に固まった石(ノジュールといいます)の中から化石が出てくることがあります。これは生き物の遺骸を核として炭酸カルシウムなどが凝集し、球状に硬くなったものとされています。ノジュールの詳しい成因については諸説ありますし、でき方は1つではないと思われますが、生物の軟体組織の炭素と堆積環境の水分に含まれるカルシウムが反応することによって炭酸カルシウムが凝集するということをつきとめた研究報告もあります(吉田他2015)。 いずれにせよ、堆積層の中からこのようなノジュールを発見したら、中に化石が入っている場合が多いということです。
魚の遺骸(化石)の周りに凝集した楕円のノジュールを半分に割ったもの
ブラジル・サンタナ層 白亜紀中期(約1億1000万年前)
大理石の化石
ビルやマンションの外壁、床などに使われる大理石の中には、ときにたくさんの化石が含まれています。大理石と呼ばれる岩石には、海の生き物の石灰質の遺骸が集まってできた石灰岩が、マグマなどの熱の作用をうけて結晶化したものがあるからです(建築用語としての大理石には、熱変成を受けていない石灰岩も含まれます)。生物由来の石灰岩は主にサンゴ礁でつくられるので、サンゴ自体や、そこに住んでいた生き物、有孔虫、ウミユリ、貝類の化石がたくさん見られます。なかにはアンモナイトがあることも。日本橋三越の内装に使われている大理石は有名ですよね。岡山でも、岡山駅地下街、桃太郎観光センター前広場の大理石の柱にアンモナイトが見つかりますよ。
大理石の中のアンモナイト
化石の研究者は、化石の種類だけでなく、色や形態を見てだいたいどの地域から産出したものか言い当てることができます。どんな化石がどんな場所(地層、時代)から見つかるか、研究者の頭にデータが入っているからです。 化石の展示を見学する際、色や形態に注目し、産地と照らし合わせてみると面白いかもしれませんよ。
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