しかし、葉の本体が残っていなくても、葉の凹凸の跡が、埋まっている砂や泥に写し取られて残っていることがしばしばあります。このように、生き物の体の凹凸の跡などが残ったものを「印象化石」といいます。
印象化石には2種類あって、図のようにもともとの生き物の凹凸とは逆の印象化石(A)と、その化石に砂や泥が入って固まった、生き物と同じ凹凸の形を残した化石(B)があります。
印象化石はさまざまありますが、館が所有している標本をいくつかご紹介しましょう。
▼三葉虫の体の殻
これは、三葉虫の殻と同じ凹凸を残した(上図のBのほう)印象化石です。三葉虫は、一般的に体の殻が化石になりますが、殻自体が残っていないことも多く、印象化石も多い生き物です。生きていればたくさんあったはずの脚や触覚は、殻よりも腐って(または溶けて)なくなりやすく、印象としても残っていることはほとんどありません。
Flexicalymene ouzregui
オルドビス紀 モロッコ産
▼ティラノサウルスの歯
これは、ティラノサウルスの歯の跡が埋まっていた岩石に写し取られたものです。よくみると、歯の鋸歯といわれるギザギザの跡(矢印)も残っています。
Tyrannosaurus rex
白亜紀後期 アメリカ産
▼貝殻(モノチス)
成羽から産出する、モノチスという二枚貝の殻の印象化石です。モノチスの殻は非常に薄いために消失しやすいと考えられ、成羽産出のモノチス化石は、ほぼ100%が印象化石です。
Monotis ocotica
三畳紀後期 成羽産
▼トクサ(ネオカラミテス)の茎
成羽から産出する植物化石で、今はもう絶滅してしまった大型のトクサ(春にツクシを伸ばすスギナの仲間)の茎の部分です。太い茎の縦縞模様や節(矢印)まではっきり残っています。
Neocalamites sp.
三畳紀後期 成羽産
コメント
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足跡や巣穴、フンなどは生痕化石に分類されるのでは?
コメントをありがとうございました!
おっしゃる通り、体そのものの化石、体化石に対して生物の生活の痕跡が化石となったもの、例えば這った跡や巣穴、足跡、糞や卵の化石を生痕化石と言います。化石化の過程に着目し、実体がないという意味で印象化石としてしまいましたが、生痕化石というべきでした。ご指摘くださり、ありがとうございました。文章を訂正させていただきました。
ついでながら、この場をお借りして言及させていただきますと、印象化石Bのほうは、正確には石核化石といいます。正確をきさず、申し訳ございませんでした。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!