前回は、化石は堆積岩の地層の中に埋まっている、というお話をしましたが、今回は、2番目の疑問、「目当ての化石が埋まっている堆積岩の地層が、どこにあるのかどうやってわかるのか」についてお話します。
2. 化石のある地層がどこにあるのか、どうやってわかるの?
研究者といえども、もしその場所が人類未踏の地で、過去に何の調査もされていなければ、化石を含む地層がどこにあるのかは、すぐにはわかりません。いえ、「すぐ」どころか、場合によっては「何年も」かかってしまうでしょう。
「化石が含まれている地層がどこに分布しているのか」は、地質図という地図を見ることでわかります。地質図というのは、どの時代の、どんな地層が、どのように分布しているのか(水平方向だけでなく、深さも)が描かれた地図です。
この地図を描くには、地層が露出している場所(露頭)をくまなく回り、地層の岩質、傾き、厚さなどを調査する必要があります。私も学生時代に、地質図づくりに同行させてもらったことがあるのですが、それは、1つの山のすべての川とその支流を、下流から起点まで1本1本歩いて上り、川沿いの崖に露頭を見つけては計測するというものでした。その山は標高500ⅿ程度の小さな山でしたが、川の中を進みながら時には滝を登ったり、切り立った崖を避けて引き返したりと、1日に調査できるのは、うまくいっても支流2~3本程度。全ての川を制覇するまで3人がかりで2か月かかりました。
このように、地道な調査によって地質図は作られますが、地質図製作に欠かせない存在が、「地質調査所(名称は国によって異なる)」です。多くの国には、地質を調べる国の機関があり、日本では産総研地質調査総合センターがその役割を担っています。その歴史はとても古く、明治15年に設立され、日本全国、陸だけでなく、海の中もくまなく調査をしています。つまり、およそ140年にわたって積み上げられてきた地質データが日本にはあるのです。そして世界の国々にも同様の機関があり、古くから地質が調べられています(地質調査は、資源確保にそのままつながるため、とても重要な事業だったからです)。
化石の研究者は、このような地質図データを参考に、化石が含まれている可能性のある「地層」がどこに分布しているのか見当をつけてから化石を探し始めます。人類にとって厳しい場所、例えば砂漠のような場所でも、100年ほど前から当時の先進的な国々によって調査がされていて、地質データが存在します。また、今でも、もっともっと詳しく調べるために、日々調査が続けられていますし、化石の研究者自身がその調査を行うこともあります。化石の研究は、長年の地質調査によって支えられているのです。
1938年に発行された、高梁の7万5千分の1地質図幅 地質調査所
(現・産総研地質調査総合センターウェブサイトより https://www.gsj.jp/Map/JP/geology3.html)
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