今回は球果類のポドザミテスについてお話したいと思います。球果類とは、裸子植物の中で球果(松ぼっくり)という「かさ」で覆われた実をつくる植物のことで、マツやスギ、ヒノキがこのグループに属します。多くの種類が細い針状の葉を持つことから、針葉樹とも呼ばれます。
ポドザミテス
成羽地域からは、9属の球果類の化石が産出していますが、なかでもポドザミテスは数多く発見されています。世界各地の中生代の地層からもよく見つかることから、この時代広く繁栄していたと考えられています。しかし白亜紀前期には絶滅してしまい、今はもういない植物でもあります。葉の形がいわゆる針葉樹と違い、細長い卵型をしていて、現生のナギ(球果類のマキ科植物)の葉によく似ています。保存の良い化石では、並行に走る葉脈もはっきりと見えます。スギのような背の高い木になるのではなく、数メートルほどの高さの木だったとされています。
スウェーデンボージア
この写真の小さな手のひらのように見える化石「スウェーデンボージア」は、松ぼっくりのかさの一片と考えられています(もう何度もお話していますが、植物化石では、実は実で別の名前がつくことがしばしばあります)。私たちがクリスマスのリースなどに使う松ぼっくりとは少し違い、かさの先端が裂けたように分かれていることが特徴です。スウェーデンボージアは、ポドザミテスの実ではないかと考えられています。手のような形がかわいくて、この化石を見つけたときは、なんだかうれしい気持ちになります。
「珍しい」のではなくて「いっぱいある」化石だけれど、成羽の森を構成する主要な一員としてポドザミテスを紹介させていただきました。