私たちがよく知っている身の回りの生物につけられた名前、例えばネコ、イヌ、マグロ、セキセイインコ、カマキリといった名前は科学的につけられたものではありません。良く寝るからネコ(寝子)だとか(語源は諸説あり)、鳥なのに、猫のような鳴き声だからウミネコなんていう名づけかたで、混乱や誤解をまねくこともあります。
そしてもちろん日本語だし、海外では通じません。海外ではまた別の名前で呼ばれるわけです。
そのような、和名とか、英名とかの名前とは別に、化石種も含めて全ての生き物には、進化や分類学に基づいた世界共通の名前「学名」がつけられています。
化石界でおそらく最も有名な名前のティラノサウルスという恐竜を例に説明しましょう。
ティラノサウルスは、大きい分類群から動物「界」脊椎動物「門」爬虫「綱」竜盤「目」ティラノサウルス「科」ティラノサウルス「属」レックス「種」です(※分類方法は学説によって異なります)。この分類の最後の属名と種名をとって、ティラノサウルス・レックスが学名となります。ちなみに、フクイリュウやタンバリュウは和名であって学名ではありません。
では、新しい学名はどうやってつけられるのでしょう。新しい学名がつけられるとき、それは見つかった生物や化石が新種であると判断されたときです。研究者が生き物について詳しく調べ、それまでに見つかっている生き物との違いを明らかにし、新種であることを報告する論文を発表します。その論文を書くときに、執筆者である研究者によって、新しい名前がつけられるのです。
例えば、ティラノサウルスらしき頭骨が発見されたとします。その頭骨が、ティラノサウルス科ではあるけれど、その中に含まれる属、例えばティラノサウルス属やナノティラヌス属、ダスプレトサウルス属など、どの属の恐竜とも異なる場合、属名も種名も新しくつけられます。
一方、ティラノサウルス属ではあるようだけれど、レックス種とはちがう、と判断されれば、ティラノサウルス・○○と、種名だけが新しくつけられることになるのです。
新しい学名は、ラテン語の文法や文型を使うなど国際的なルールに従ってつけられます。その生き物の特徴や見つかった場所、発見者の名前にちなむことが多いようです。
わが成羽の植物化石は、発見された110種余のうち何と約40種が新種です。名前をつけ放題だったわけですが、おかげさまで成羽の名前を冠した「ナリワエンシス」や「ナリウェンシス」、岡山の名前にちなんだ「ビッチュウエンシス」「オカヤマエンシス」なんていう、岡山特有の名前がついた化石が少なからずあります。昭和の初めに世界に先んじて研究してくれた、藤岡一男先生と大石三郎先生の功績といえましょう。
この地元の名前がついた化石たちをぜひ見に来てくださいね!
成羽の名前にちなんだ、「エクイセティテス・ナリウェンシス」
三畳紀後期
成羽産
トクサのなかま。現生のトクサ(茎の径約1㎝)と違い、茎の太さが5㎝もある。