今回からはシリーズで、成羽地域から産出する代表的な植物化石をご紹介します。その栄えある第1号は「ハウスマンニア・ナリワエンシス」です!
ヤブレガサウラボシ科
ハウスマンニア・ナリワエンシスはシダ植物のなかまで、「ヤブレガサウラボシ科」という科に属しています。「ヤブレガサ?なにそれ」と思ったかたも多いでしょう。
ヤブレガサウラボシ科の葉は、その名の通り「破れ傘」で「裏星」なのです。シダ植物には珍しく、放射状に葉が広がり、さらに深い切れ込みがたくさんあって、その様子はまるで破れた傘のように見えます。そして、これはシダ植物にはふつうのことですが、葉の裏側にある、小さく散在する胞子嚢がまるで星のよう、ということで「裏星」なのです(別の種類で、ウラボシというシダもあります)。
現生のヤブレガサウラボシのなかまは、亜熱帯から熱帯地域の山間部の、日当たりが良い場所に群生し、高さが2mにも達する大型のシダです。世界でもあまり種数は多くなく、8種ほどしか残っていません。日本では1種類が西表島でみられるのみです。
たくさんいたヤブレガサウラボシ
というわけで、現生では少ない種数のヤブレガサウラボシですが、中生代、特に三畳紀後期からジュラ紀にかけて、もっと多くの、多様なヤブレガサウラボシがいました。
成羽からだけでも、16もの種類が見つかっていて、成羽産のシダ目の中では一番多様な種類が有するグループとなっています。
ハウスマンニア・ナリワエンシス
ハウスマンニアは化石種です。葉の形がさらに特徴的で、特にナリワエンシスはきれいな楕円を描き、切れ込みが一か所しかないために、まるで豆のような形をしています。
実は、成羽の植物化石のなかで一番初めに新種として報告されたのがこの化石。ナリワエンシスという地名にちなんだ種名がつけられました。成羽フローラを代表する化石といってよいでしょう。
Hausmannia nariwaensis ハウスマンニア・ナリワエンシス
三畳紀後期 高梁市成羽町枝 (葉の幅:約10㎝)