今回は、前回ご紹介したシダ植物化石ハウスマンニア・ナリワエンシスのなかま、ハウスマンニア・デンタータをご紹介します。
ハウスマンニア・デンタータは、ナリワエンシスと同じくヤブレガサウラボシ科に属していて、放射状に広がる葉をもっています。ナリワエンシスとちがう点は、大きな切れ込みがいくつかあること。本当に破れた傘のような葉なのです。
胞子が残った化石
この化石のすごいところは、葉の裏にある、胞子嚢までも残っていること。
胞子嚢とは、胞子が入っている袋のことです。シダ植物の葉の裏には、その種類に特徴的な配列で胞子嚢がたくさん付着しています。
シダ植物では、この胞子嚢がはじけて胞子が飛び、無性生殖をして「前葉体」という小さな葉っぱのようなものを発芽させます。この発芽した前葉体で卵子と精子とが有性生殖をして、私たちがよく見かけるシダの葉っぱ(胞子体)ができるわけです(胞子をつけない栄養葉のある種類もいる)。
この化石には、胞子嚢がはっきりと残っています。葉の全面に胞子嚢がまんべんなく広がっていることが観察され、これはヤブレガサウラボシ科の特徴をよく表しています。
シダ植物の生活環
化石種であり、新種でもあります
デンタータも化石でしか見られない種で、そして新種登録されたタイプ標本でもあります。現在実物の化石は、命名した大石三郎博士が在籍していた、北海道大学の総合博物館に保管されています。
Hausmannia dentata ハウスマンニア・デンタータ
三畳紀後期 高梁市成羽町枝