今回は、もうすでに絶滅してしまった植物の化石をご紹介します。その植物とは、シダ種子類カイトニア目というグループに属する「サゲノプテリス・ナリワエンシス」です。
シダ種子類ってなに?
「シダ種子類」ってあまり聞きなれない言葉ですよね。シダとついているのでシダの仲間かと思いきや、そうではありません。
シダ種子類は原始的な裸子植物のなかまです。古生代デボン紀に現れて石炭紀に繁栄し、白亜紀末には絶滅してしまいました。つまり化石種しか知られていないということです。
裸子植物である証拠に種子をつけますが、葉の形がシダによく似ているものがあり、このような名前で呼ばれるようになりました。シダ種子類には多くの種類がありますが、互いの類縁関係がよくわかっていないので、このようなタイプの原始的な裸子植物をひとまとめにし、総称として「シダ種子類」とされています。
石炭紀に多様化した種類の中のいくつかが、おそらく中生代に出現したほかの裸子植物の祖先である可能性や、また別のある種から被子植物が進化した可能性が指摘されています。
カイトニアって?
カイトニアは、シダ種子類のなかでも中生代に栄えたグループで、細長い葉が集まって手のひらを広げたような形をした葉が特徴です(カイトニアのなかまの葉はあまりシダの葉には似ていません)。その葉には、サゲノプテリス(属名)・ナリワエンシス(種名)という学名がつけられています。※1ほかに雌花(大胞子葉:胚珠をつくる)はカイトニア属の学名、雄花(小胞子葉:花粉をつくる)にはカイトナンサス属の学名と、それぞれ部位によって異なる名前がつけられています※2
※1 学名について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
第12回 学名ってなんだろう? | 高梁市成羽美術館 (nariwa-museum.or.jp)
※2 植物化石あるあるですが、別々のパーツで発見されるために別々の学名がつくのですが、のちに同じ種類の植物のパーツであることがわかることがあります。
サゲノプテリス・ナリワエンシスは、サゲノプテリスの新種として登録され、「ナリワエンシス」と成羽の名にちなんだ名前が与えられました。人の背ほどの低木で、枝がたくさん伸びていたと考えられています。
今はもういない、絶滅した植物の化石をぜひ一度見に来てくださいね!
Sagenopteris nariwaensis サゲノプテリス・ナリワエンシス
三畳紀後期 成羽町枝
カイトニアの復元図
背の低い木だったとされる