1912(大正元)年、ヨーロッパ留学より帰国した虎次郎は、翌年結婚し倉敷市酒津に居を構え制作の拠点とします。本作が描かれたのはその頃。よく焼けた肌に汗がにじみ、眩しそうに目を細める農夫の表情と、肩にかかる麦わら帽子の強い影からギラギラとした真夏の日差しが伝わってきます。緑と薄紫の明るい色彩を基調に、点や線の筆致を丁寧に使い分けながらも、絵具のチューブやペインティングナイフで大胆に塗り込める箇所も見られることから、これまで習得したさまざまな技法を試していることが分かる作品です。

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